お外に遊びに行けない日は、元気いっぱいのお子さんとどう過ごそうか、頭を悩ませていらっしゃるお母さんやお父さんは多いのではないでしょうか。テレビやタブレットも便利ですが、「何か集中して取り組める遊びはないかな?」「楽しみながら子供の成長にいいものって?」と探している方もいらっしゃるかもしれませんね。
そんなお母さんたちに、ぜひ知っていただきたいのが、昔ながらの遊び、「コマ(独楽)」が持つ素晴らしい知育効果です。
「え、コマ? 難しそう…」「男の子の遊びじゃないの?」と思われた方もいるかもしれませんね。でも、実はコマは、お子さんの「指先の発達」、ひいては脳の発達に、驚くほど良い影響を与えてくれる、隠れた名選手なんです。
1. 指先は「第2の脳」?! 豊かな脳を育む指先のチカラ
私たち人間の手、特に指先は、非常に多くの神経が集中している場所です。脳科学の世界では、指先は「第2の脳」とも呼ばれるほど、脳の発達と密接な関係があることが知られています。
生まれたばかりの赤ちゃんが、周りのものを何でも口に入れて確かめるように、子どもたちは五感をフル活用して世界を認識していきます。その中でも、手や指先を使って触ったり、つまんだり、握ったりする動作は、脳へダイレクトに刺激を送り、脳の発達を大きく促す大切な行為なのです。
ちょうど3歳~5歳頃のお子さんは、これまで身につけてきた基本的な運動能力に加え、より複雑で精密な動きができるようになる時期です。スプーンやフォークを上手に使ったり、ボタンを留めたり、クレヨンで絵を描いたり…日々、指先の使い方が洗練されていくのを感じるシーンが多いと思います。
この時期に、指先を繊細に使う遊びを取り入れることで、脳の運動野や感覚野が活性化され、神経回路がより密に張り巡らされていきます。これが、将来の学習能力や運動能力の土台となる、非常に重要な「知育」なんです。
2. コマが指先に与える「神業」トレーニング
では、具体的にコマ遊びが、お子さんの指先のどんな能力を伸ばしてくれるのでしょうか?
a. 究極の「つまむ」「挟む」練習
まず、コマに紐を巻き付ける動作。これには、親指、人差し指、中指などが連携して、コマと紐を正確に「つまみ」、そして「挟む」という高度な技術が求められます。
大人にとっては当たり前の動作かもしれませんが、5歳のお子さんにとっては、これは立派なチャレンジです。指先で物を安定して保持する力、そしてそれぞれの指を独立させながら協調させる力が、この巻き付ける動作によって着実に養われていきます。
b. 微妙な「力の加減」を学ぶ
紐をコマに巻き付ける際、ただ巻き付ければ良いわけではありません。きつく巻きすぎると紐が外れにくくなり、緩すぎると回した瞬間に紐が滑ってしまいます。この「ちょうど良い力加減」を見つけることが、コマを上手に回すための鍵となります。
指先で微妙な圧力を感じ取り、それを調整する能力は、日常生活で例えるなら、鉛筆を握る力加減や、消しゴムで文字を消すときの力加減、お箸で豆腐をつまむような繊細な動きにもつながる、非常に大切なスキルです。コマ遊びを通じて、指先から脳への感覚フィードバックが強化され、「このくらいの力でやると、こうなる」という経験知が蓄積されていきます。
c. 瞬時の「離すタイミングと方向」の習得
そして、最も醍醐味と言えるのが、巻き付けた紐を「離す」瞬間です。狙った場所に、狙ったタイミングで、そしてコマに最大限の回転エネルギーを与えるように紐をパッと離す。この一連の動作は、まさに指先の巧緻性の集大成と言えるでしょう。
指の力を瞬時に緩め、コントロールする能力は、例えばボールを投げる時のリリースポイントや、ハサミで曲線に沿って紙を切るような、精密な動作に応用されます。
3. 指先から広がる、心の成長と脳の活性化
コマ遊びは、単に指先を鍛えるだけでなく、お子さんの心や脳にも良い影響を与えます。
- 集中力の向上: 「どうすればうまく回るだろう?」「もっと強く回すには?」と試行錯誤する過程は、お子さんの集中力を養います。何度も失敗しても諦めずに挑戦する中で、粘り強さや根気も育まれていきます。
- 問題解決能力の育成: うまく回らなかった時に、「なぜかな?」「どうすれば良いかな?」と自分で考え、試してみることは、問題解決能力の基礎を築きます。
- 達成感と自己肯定感: 最初はなかなかうまく回せなくても、練習を重ねるうちに「できた!」という喜びは格別です。この成功体験は、お子さんの自信と自己肯定感を育み、「もっとやってみよう」という意欲につながります。
4. コマ遊びを親子で楽しむヒント
「コマ、どこで手に入るの?」と思われるかもしれませんね。
最近では、玩具店やオンラインストアでも手に入るほか、地域によっては昔ながらのおもちゃを扱うお店で見つけることができるかもしれません。また、最近は木製やブリキ製のコマの他にプラスチック製のものや、ベイゴマのように小さなものや紐を使わず手で回すコマなどいろいろなタイプがありますので、まずはお子さんが簡単に取り組めそうなもので試してみるのも良いでしょう。

5歳のお子さんには、最初は少し難しいと感じるかもしれません。でも大丈夫。最初から完璧に回せなくても、まずは「紐を巻き付ける練習」「コマを手でつまんで回す練習」から始めてみましょう。お母さんが隣でゆっくり手本を見せてあげたり、一緒に指を動かしてあげたりするだけでも、お子さんは喜びます。
「うまく回ったね!」「今度はこんな風にしてみようか?」と声をかけながら、結果だけでなく、挑戦する過程そのものを褒めてあげてください。
まわりに危ないものがないか確認し、ダンボールで囲うなどしコマが飛び出さないよう安全な場所で遊ぶようにしましょう。またコマで床が傷ついたり下の階の騒音になることがあるので、遊び方には十分注意を払うことも大切です。
最後に
デジタルデバイスが普及した現代において、指先を使ったアナログな遊びの価値は、むしろ高まっていると言えるでしょう。コマは、そんな指先を最大限に活用し、脳を刺激し、そして何よりも「できた!」という喜びを味わわせてくれる、素晴らしい知育玩具です。
ぜひこの機会に、お子さんと一緒にコマの奥深さに触れてみませんか? 昔ながらの遊びが、お子さんの未来を育む豊かな「指育」の時間となることでしょう。そして、親子の楽しいコミュニケーションのきっかけにもなりますように。